2014年9月5日金曜日

いろと質感


陶器の前沢幸恵です。


今回は釉薬の調合について書かせていただきたいと思います。


今回のテーマは「いろ」ですが、いろといっても工芸においては絵具のような「いろ」ではなく、表情をともなった「いろ」になります。光沢があったり、透けていたり、マットだったり...
例えば、陶器では地の粘土の上に、ガラス質の釉薬をかけて焼成すると重なり合った複雑な「いろ」を見せてくれます。もちろん、無釉で土自体の色味だけの場合もあります。私は、土自体に興味があるので、ほとんど釉薬は透明か土を混ぜたマットなものを使います。


今回は透明釉の貫入を減らす釉薬をテストしたので、調合の感じをご紹介させていただきます。
貫入とは、表面のガラス質の釉薬が、素地の土と焼成後の冷却時に収縮率が合わなくて、ひび割れが起こる現象です。大体の陶器には見えにくいだけで貫入は入っています。わざと貫入を起こさせて意匠にする釉薬もありますが、そうじゃない場合、あまり好ましいものではありません。

釉薬や化粧土などの原料たちです。ほとんどが粉状で複数種類を混ぜて使います。


陶芸の場合、どうなるか焼いてみないとわかりません。なので、焼き上がりを想定して計算し調合して焼成の実験を繰り返すことになります。
例えば貫入を減らすことを考えた場合、収縮率が違うから起こる事だから、収縮率を素地の粘土と合わせてみたらいいのでは?などと仮定し、基礎釉薬に添加物を5%から10%ずつ加えるなど、段階を決めて調合していきます。

計量した原料を乳鉢ですり合わせて作ります

焼き上がりです。
微妙な変化ですが、添加物を加えすぎるとマットになって緑がくぐもったり...
中間を探すところが難しいです


釉薬調合はどちらというと、科学の実験みたいで、かなり地道で地味な作業です。私はあまり好きではありませんが、土の魅力を引き出してくれる存在だと思っています。
絵具の色とは違う、質感も伴う様々な事が影響し合って化学変化によって起こる「いろ」が工芸の持つ魅力だと思っています



2014年9月4日木曜日

木のいろ

木工の薗部です。こんにちは。今回は私達が普段目にしている色のこと、木の色の事について、文章にしてみたいと思います。



少しいきなりですが、仏教では「色」とは目に見える一切もの全てを指すのだそうです。その考えによってゆくと私達は常に色を見ているという事ができるわけです。考え方というものの面白みを感じないわけにはいきません。

そんな事意識したことないよ。
と、いう人はもおられると思います。例えば、光がなくなる夜の暗闇は色があるのか、見えているのにみえないじゃないか。言い方を替えると、目は開いているのに何も見えないじゃないか。となるわけです。
なるほど。しかしですね、色の認識の考え方によってゆくと例えば、「闇の色」という名前をつければそこにも色がありそうです。つまり色という考え方でいけば、それでいろいろ解決しちゃいそうです。とても便利な考え方ですね。

この事と僕の作品がどう関係しているかといいますと、今のところ直接は無いのですが、あるとき意識的に木の色というか、木の表面をあらためて見たときのことを思い出します。木の色は不思議です。物質は表面で光が跳ね返り私達は網膜で受け取り、その光が見えるわけですが、木の場合、少し光が深部に入ります。ほんの少しです。水に濡らしたり、クリア塗料を塗るとそれが顕著になります。そこは大きな特徴です。

少し透過する。これは木だけの特徴ではないのですが、特にそこの見え方は独特です。とても小さな色の複合。自然物の不思議。

ついでに自然光線はとても多くの色彩の幅を私たちに感じさせてくれています。白木の作品写真を撮っていると(直射でないほうがよいです)見違える程の違いをその傾きやら雲行きやらで、感じさせてくれます。明度が揃わないなど困ることもあるのですが、その魅力はまさに言葉にできません。

私達は幸せにも、ほぼ無意識に色を受け取っているんですね。



2014年9月3日水曜日

透明な素材といろのこと

こんにちは。
ガラスの蔦嶋 薫です。

今回は作品に用いる色についてのお話です。


ガラスは透明な素材ですが、粒や粉状にすることで透明〜半透明〜白のグラデーションを作り出すことが可能です。
もともと着色されたガラスや絵付けをするための粉などもあり、色のバリエーションはかなり多い素材だと思います。

その中でも私が作品によく使用する色は「白」です。
白は透明のガラスとなじみやすい色だと感じています。粉状のガラスは白いですから、当然と言えば当然ですね。ガラス本来がもっている色でもあります。

白は広範囲に使用してもガラスの素材感を邪魔しないため、使い勝手がよいのです。
白以外の色、なかでも発色のいい色(赤、オレンジ、緑など…私が使っているガラスは外国製のものが多く、目が痛くなるような色も少なくありません)は部分的に使用することがほとんどです。
たくさん使うと全体よりも色ばかりが目に入るため、使う分量には注意が必要です。





2014年8月31日日曜日

工芸の色 小島秀子②

染織の小島秀子です。

 今回の展示テーマは「色」です。
工芸の「色」は素材を伴ったいろです。同じカラーチップで色を選んでそれぞれの素材でその色を表現しても、皆違う表情の色になります。
同じ色を選んで色を染めても、素材によって表情が違ってきます。
絹糸、木綿、ウール、麻・・・・
そして同じ絹糸でも、沢山の種類があり、色の見え方の表情も様々です。
作品を制作するときは用途によって素材を選ぶ事も多いですが、色の見え方から素材を選ぶ事もあります。
その色の見え方を表現したい時に、その素材でなくては表現出来ない事もあります。

自分の織物の色と向き合う事。
これはいつもの仕事で、いつも毎日毎日積み上げていますが、
今回の「いろに想う」では、メンバーの他の素材の工芸の「色」と向き合う事も、私にとっては楽しみです。

透明感のあるガラスの色。田原さんのガラスの黄色。
光を通す黄色は軽く見えていても実は暗いかもしれない。
蔦嶋さんのガラスの創り出す影の色。
無彩色に見えるけれど、色々な色を含んでいるかもしれない。
長谷川さんの金属が反応して発色する天然の色。
鮮やかに見える色もとても静かな色かもしれない。
佐藤さんの白が創り出す陰影。優しく見えるけれど強いかもしれない。
泉さんの磁器の白、白い中にたくさんの色があるかもしれない。
土屋さんの木綿で表現された色は、マットだけれど艶やかかもしれない。
森田さんの華やかな可愛い花の色は、とても静かな色かもしれない。
桂川さんの、色は一つの色に沢山の色が見え隠れしている。
前沢さんの透ける様な緑は、織りで表現したらどんな色になるのだろう。
濱野さんの陶器の色はの強さは、どんな色で出来ているのだろう。
薗部さんの木は、天然の色。織りの素材の天然の色とどんな風に違うのだろう。
雪ノ浦さんの色は素材を変えたらどんな色に見えるのだろう。

沢山の工芸の色と向き合える事、とても楽しみにしています。

画像は私の使う織りの素材のいろいろ